上司に目の敵にされる理由と対処法|パワハラか見分けるチェック表つき

転職準備
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毎朝、会社に向かう足が重い。

「なんで自分にだけ、こんなに厳しいんだろう…」

そう感じながら、働いていませんか?

  • 同じミスでも、自分だけ人前で強く責められる
  • 報告に行くと、内容より先に態度を注意される
  • 会議で発言すると、必ず否定から入られる

家族の顔を思い浮かべると、簡単には辞められない。

でも、このまま我慢を続けていいのかもわからない。

その板ばさみは、本当にしんどいですよね。

上司との関係に悩んでいるのは、あなただけではありません。

厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」では、パワハラを受けた人に行為者をたずねたところ、「上司(役員以外)」が65.7%で最も多い結果でした。

一方で、受けた後の行動は「何もしなかった」が36.9%で最多です。

「我慢するしかない⋯。」

「何をしても解決にならない」と考えて、動けずにいる人が少なくないということです。

先に結論をお伝えします。

上司に目の敵にされた時

  1. まず、「厳しい指導」なのか「パワハラに当たりうる言動」なのかを見分ける
  2. 次に、記録を残してから、社内外に相談する
  3. 辞めるかどうかを決めるのは、最後

この記事では、

をまとめました。

眠れない・出勤がつらい日が続いている人は、先に心身の不調のサインのチェックから読んでください。

教育費や住宅ローンを抱えるミドル世代が、感情ではなく事実で次の一手を選べるように書いています。

えーじ
えーじ

上司との関係は毎日のことなので、本当に消耗します。

ただ、勢いで辞めるのが正解とは限りません。

まずは何が起きているのかを、整理するところから始めましょう。

  1. 上司に目の敵にされる理由とは|自分にだけ厳しいと感じる時に考えること
    1. 上司側にある目の敵にする理由
    2. 自分側で見直したい目の敵にされやすい言動
    3. 厳しい指導と目の敵の違いを見分ける3つの視点
  2. 上司が人前で怒るのはパワハラに当たる?境界線と6つの類型
    1. 法律で定められた職場のパワハラの3つの条件
    2. パワハラの6類型と職場で起きやすい具体例
    3. 【道具】パワハラか見極めるためのチェックリスト
  3. 上司に目の敵にされた時に今日からできる対処法
    1. 【道具】記録の付け方とそのまま使える記録テンプレート
    2. 角を立てずに上司へ伝える例文3つ
    3. やってはいけない反応
  4. 上司の嫌がらせを相談できる社内外の窓口
    1. 社内の相談先
    2. 社外の相談先
    3. 【道具】相談前に整理しておく相談メモ
  5. 上司に目の敵にされた時の対処で失敗しやすいパターンとデメリット
    1. ①我慢を続けて心身を壊してしまう
    2. ②記録なしで訴えて社内での立場が悪くなる
    3. ③勢いで辞めて家計と職歴が苦しくなる
  6. 見逃したくない心身の不調のサインと休む判断
    1. 【道具】不調のサインのチェックリスト
    2. 受診や休職を考えるタイミング
  7. 上司の標的から抜け出す異動と転職の判断基準
    1. 異動の希望で解決しやすいケース
    2. 転職を考えたほうがよいケース
    3. ミドル世代が家族を守りながら在職中に転職準備を進める手順
  8. 上司に目の敵にされる時によくある質問
    1. Q. 上司に目の敵にされたら辞めるべきですか?
    2. Q. 1回だけ人前で怒鳴られたらパワハラになりますか?
    3. Q. 上司とのやり取りを録音してもいいですか?
    4. Q. 人事に相談したら上司にばれますか?
  9. まとめ|上司に目の敵にされても一人で抱え込まず順番に動く

上司に目の敵にされる理由とは|自分にだけ厳しいと感じる時に考えること

なぜ自分だけが⋯、と感じたとき。

理由は、上司側にある場合と、自分側にある場合があります。

両方が重なっていることも珍しくありません。

※ここで紹介する理由は調査データではなく、職場でよく見られるパターンを筆者が整理したものです。

上司側にある目の敵にする理由

まずは、上司の側にある事情です。

  • 脅威や嫉妬:経験や実績のある部下に、自分の立場をおびやかされると感じている
  • 年上部下の扱いにくさ:年下の上司が、年上の部下への接し方に迷い、つい強く出てしまう
  • 上からの圧力:上司自身が成果を厳しく求められ、そのしわ寄せが部下に向いている
  • 余裕のなさ:業務量が多く、言葉を選ぶ余裕がなくなっている
  • 相性:仕事の進め方や話すテンポが、どうしても合わない

どれも、あなたの価値が低いから起きることではありません。

上司側の事情であれば、あなたが変えられる部分は限られます。

だからこそ、自分を責めすぎないことが大切です。

自分側で見直したい目の敵にされやすい言動

一方で、少しだけ自分の行動も振り返ってみてください。

自分を責めるためではありません。

打てる手を増やすためです。

  • 報告のタイミングのずれ:悪い報告ほど後回しになり、上司が別の人から先に聞いてしまう
  • 前職のやり方への固執:「前の会社ではこうだった」が口ぐせになっている
  • 人前での反論:会議の場で、上司の意見を正面から否定してしまう
  • 小さなミスの重なり:一つひとつは小さくても、続くと「またか」と思われる

経験を積んだミドル世代ほど、無意識に「自分のやり方」を通してしまうことがあります。

思い当たるものがあれば、そこは今日から変えられる部分です。

たとえば、悪い報告ほど早めに入れる、反論は1対1の場で伝える。

これだけで、上司の態度がやわらぐこともあります。

厳しい指導と目の敵の違いを見分ける3つの視点

厳しい上司が、全員あなたを目の敵にしているわけではありません。

次の3つの視点で見分けてみてください。

視点厳しい指導に近い目の敵にされている可能性
①他の人への扱い同じミスには、誰にでも同じように注意する同じミスでも、自分だけ強く責められる
②指摘が具体的か「この数字の根拠を資料に足して」など、直す点がわかる「やる気あるのか」など、何を直せばいいかわからない
③人格を否定しているか行動や成果物について指摘する「だからお前はダメなんだ」など、人柄や能力そのものを否定する

右の列に当てはまるものが多いほど、指導の範囲を超えている可能性があります。

次の章で、国の指針の考え方とあわせて確認していきましょう。

えーじ
えーじ

内勤責任者として部下を評価する立場にいたとき、強く感じたことがあります。

指導は、感情をぶつける叱責とは別物。

言われたあとに直す点が一つも浮かばないなら、それは指導として機能していません。

上司が人前で怒るのはパワハラに当たる?境界線と6つの類型

「人前で怒鳴られた。これってパワハラなのかな」

迷いやすいのが、この境界線です。

ここでは、国が示している指針をもとに整理します。

法律で定められた職場のパワハラの3つの条件

職場のパワハラは、労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)で定められ、厚生労働省のパワハラ指針で具体的に示されています。

次の3つをすべて満たすものが、職場のパワハラとされています。

  1. 優越的な関係を背景とした言動であること
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
  3. 労働者の就業環境が害されるものであること

上司から部下への言動は、①の「優越的な関係」を背景とした言動にあたりやすい場面です。

一方で、指針には次の一文もあります。

「客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない」

つまり、厳しいというだけで、すぐにパワハラになるわけではありません。

判断するときは、言動の目的、労働者側の問題行動の有無、言動の態様・頻度・継続性などを総合的に考えるとされています。

就業環境が害されたかどうかは、「平均的な労働者の感じ方」が基準です。

えーじ
えーじ

あなたがつらいと感じていること自体は、大切な事実です。

そのうえで、第三者から見てどうかという目線も持っておくと、相談の場で話が伝わりやすくなります。

なお、パワハラ防止の措置は大企業で2020年6月1日、中小企業でも2022年4月1日から会社の義務になっています(厚生労働省)。

2026年10月1日からは、カスタマーハラスメント対策なども全ての会社の義務になりました(厚生労働省の案内)。

この改正では、職場で働く人の就業環境を害する言動は誰であっても行ってはならないという考え方も、法律に書き込まれています(改正の概要)。

上司からのパワハラの定義や6つの類型は、これまでと変わっていません。

パワハラの6類型と職場で起きやすい具体例

指針では、パワハラの代表的な言動を6つの類型に分けています。

それぞれに「該当すると考えられる例」と「該当しないと考えられる例」が示されています。

類型該当すると考えられる例該当しないと考えられる例
身体的な攻撃殴打、足蹴りを行う/物を投げつける誤ってぶつかる
精神的な攻撃人格を否定するような言動/必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う/他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行う/相手の能力を否定し罵倒するような内容のメール等を複数の労働者宛てに送信する遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意しても改善されない労働者に一定程度強く注意する/重大な問題行動を行った労働者に一定程度強く注意する
人間関係からの切り離し意に沿わない労働者の仕事を外し、長期間別室に隔離する/同僚が集団で無視する新規採用者を短期間集中的に別室で研修する
過大な要求私的な雑用の処理を強制的に行わせる など育成のために少し高いレベルの業務を任せる/繁忙期に一定程度多い業務を任せる
過小な要求管理職を退職させるため、誰でもできる業務を行わせる/嫌がらせのために仕事を与えない能力に応じて、一定程度業務の内容や量を軽減する
個の侵害職場外でも継続的に監視する/機微な個人情報を本人の了解なく暴露する配慮を目的として、家族の状況等についてヒアリングを行う

※指針の例を要約・抜粋しています。指針では、これらの例は限定列挙ではなく、「個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得る」とされています。

人前で怒る上司の場合、注目したいのは「精神的な攻撃」の例です。

「他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと」が、該当すると考えられる例に挙がっています。

ポイントは「繰り返し」という言葉です。

1回だけなのか、何度も続いているのか。

ここが、あとで説明する記録の大切さにもつながります。

反対に、該当しないと考えられる例にも目を向けておきましょう。

遅刻など社会的ルールを欠いた言動があり、再三注意しても改善されない場合に、一定程度強く注意すること。

これは、該当しないと考えられる例です。

耳の痛い話ですが、自分が同じ注意を何度も受けていないか、ここで一度振り返っておきましょう。

冷静に振り返った人ほど、相談したときの説明に説得力が出ます。

【道具】パワハラか見極めるためのチェックリスト

ここまでの内容を、チェックリストにまとめました。

ここ数か月の上司の言動を思い出しながら、確認してみてください。

  • 同じミスでも、自分だけ他の人より強く責められる
  • 他の社員がいる前で、大声で叱責されることが何度もある
  • 「使えない」「向いていない」など、能力や人格を否定する言葉を言われる
  • 必要以上に長い時間、厳しく叱られることが繰り返しある
  • 自分を否定するような内容のメールやチャットを、他の人も見える形で送られる
  • 理由の説明がないまま、担当していた仕事を外された
  • 会議や連絡の輪から、自分だけ外されている
  • 業務と関係のない雑用を押しつけられる
  • 能力や経験に見合わない、簡単な仕事しか与えられなくなった
  • 職場の外での行動や家庭の事情を、必要以上に詮索されたり、周りに話されたりする

※当てはまる数は目安です。最終的な判断は、相談窓口や専門家に確認してください。

1つでも当てはまり、それが何度も続いているなら、次の章の「記録」から始めてみてください。

あわせて、同じ内容の注意を何度も受けていないかも、正直に振り返っておきましょう。

パワハラかどうかの判定ではなく、次に読む場所の目安です。

上司に目の敵にされた時に今日からできる対処法

ここからは、今日からできる具体的な行動です。

柱になるのは「記録」「伝え方」「やってはいけない反応」の3つです。

【道具】記録の付け方とそのまま使える記録テンプレート

最初にやるべきことは、記録を残すことです。

厚生労働省のあかるい職場応援団「悩んでいる方へ」では、「いつどこで誰が何を何のためにどのように(5w1h)したのかを記録しましょう」と呼びかけています。

「メモや録音など最適な方法で記録を残すことをお勧めします」とも書かれています。

法テラスも、「事実経過や加害者の言動等についてメモを作成する、録音をするなどして、証拠を残しておくこと」をすすめています。

連合の労働相談Q&Aでも、「状況をできる限り詳しく記録し(いつ、どこで、誰に、何をされたか等)、証拠を確保する」ことが挙げられています。

記録は、相談するときに状況を正確に伝える材料になります。

時間がたって記憶があいまいになるのも防げます。

次のテンプレートを、スマホのメモアプリにコピーして使ってください。

【記録】
■日時:◯月◯日(◯曜)◯時◯分ごろ
■場所:(例:第2会議室/営業フロアの自席付近)
■言われたこと・されたこと(そのままの言葉で):
「                」
■その場にいた人:(例:◯◯さん、◯◯さん)
■自分の対応:(例:「申し訳ありません」とだけ答えた)
■心身への影響:(例:その夜は眠れなかった/翌朝、胃が痛かった)
■関係するメールやチャットの保存先:(例:◯月◯日受信の社内メール/チャットの◯月◯日のやり取り)
■メモ:

書くときのコツは3つです。

  • その日のうちに書く:時間がたつほど、言葉の細かい部分を忘れます
  • 相手の言葉はそのまま書く:「ひどいことを言われた」ではなく、実際のセリフを残します
  • 事実と気持ちを分ける:「悔しかった」「眠れなかった」は、心身への影響の欄に書きます

1件書けたら、次は上司への伝え方の例文へ。記録がたまってきたら相談メモにまとめます。

「その場にいた人」は、5W1Hの「誰が」を広げた項目です。

あとで状況を説明するとき、誰が見ていたかがわかると、話がぐっと具体的になります。

※注意※

会社のメールやデータを、個人のアドレスや端末に送ることが、社内規程で禁止されている場合があります。保存の方法は、就業規則や情報管理のルールを確認してから決めましょう。

えーじ
えーじ

録音については、よくある質問でくわしく触れています。

→ 録音してもいいかの答えを見る

角を立てずに上司へ伝える例文3つ

記録と並行して、上司との接し方を少し変えてみるのも一つの手です。

コツは、責める言い方ではなく、仕事を進めるためのお願いとして伝えることです。

人前を避けて、別室で指摘してほしいとき

「ご指摘はしっかり受け止めたいと思っています。次からは、会議室など別の場所でお話しいただけると、落ち着いて伺えます。」

ポイント:指摘そのものは受け入れる姿勢を見せたうえで、場所だけをお願いする

指示を文字で確認したいとき

「認識のずれを防ぎたいので、今のご指示をチャットでまとめてお送りします。違っていたらご指摘ください。」

ポイント:自分から文字にすると角が立たず、そのまま記録にもなる

改善点を具体的に聞きたいとき

「次は同じご指摘を受けないようにしたいです。今回の資料で、特にどこをどう直せばよかったか教えていただけますか。」

ポイント:「どこを」「どう」と聞くと、感情的な叱責が仕事の話に戻りやすい

例文を使っても、態度が変わらない上司もいます。

その場合は、伝えた日時と上司の反応も、記録に残しておきましょう。

あなたが関係をよくしようと動いた事実も、相談するときの材料になります。

やってはいけない反応

つらいときほど、とっさの反応で状況を悪くしてしまうことがあります。

  • 感情的に言い返す:その場は気が晴れても、「態度が悪い部下」という印象だけが残りやすい
  • 陰口を広める、同僚を巻き込む:話が上司に伝わり、関係がさらにこじれることがある
  • 黙って一人で抱え込む:我慢を続けるほど、心と体に負担がたまっていく

同僚に話すこと自体が、悪いわけではありません。

信頼できる一人に話を聞いてもらうのと、職場で愚痴を広めるのとは別の話です。

同じ実態調査では、パワハラを受けた後に「家族や社外の友人に相談した」人が19.3%、「社内の同僚に相談した」人が18.3%でした。

まずは家族や社外の誰かに話してみる。

それも立派な一歩です。

上司の嫌がらせを相談できる社内外の窓口

記録がそろってきたら、相談先を考えましょう。

社内と社外、両方の窓口を知っておくと、選べる道が増えます。

社内の相談先

社内で相談できる主な相手は、次のとおりです。

  • 上司のさらに上の上司:直属の上司を飛び越えることになるので、記録を整理してから
  • 人事部:異動や配置の相談もしやすい
  • ハラスメント相談窓口:会社が設けている専用の窓口
  • 産業医:心身の不調が出ているときに

会社には、パワハラを防ぐための措置が義務づけられています。指針で示されている主な内容は、次のとおりです。

  • 方針をはっきり定め、社員に周知する
  • 相談窓口を設け、社員に知らせる
  • 相談があったら、迅速かつ適切に対応する
  • 相談した人や行為者とされた人のプライバシーを守る
  • 相談したことなどを理由に、解雇その他の不利益な取扱いをしない

指針では、相談窓口は「該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応」することとされています。

パワハラかどうか自信がない段階でも、相談してかまいません。

相談するときは、「話した内容が誰にどこまで共有されるのか」を最初に確認して大丈夫です。

ただし、社内の窓口だけに頼るのは注意が必要です。

同じ実態調査では、パワハラについて勤務先が認識した後の対応として、次の結果が出ています。

  • 勤務先の対応は「特に何もしなかった」:53.2%
  • パワハラと認められたかどうかは「あいまいなまま」:61.4%
  • 相談したことを理由に不利益な取扱いを受けた:6.1%
えーじ
えーじ

会社がきちんと動いてくれるとは限らない。

それが現実です。

社内に相談するときも、社外の窓口を並行して使っておくと安心です。

社外の相談先

社外には、公的な相談窓口があります。

窓口できること費用・予約
総合労働相談コーナーいじめ・嫌がらせ・パワハラを含む、あらゆる労働問題の相談。面談と電話に対応。全国378か所無料・予約不要
都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)会社のパワハラ防止措置をめぐるトラブルについて、労働局長による援助や、調停委員による調停を利用できる無料
こころの耳働く人のメンタルヘルスについて、電話・SNS・メールで相談できる受付時間はリンク先で確認
法テラス法的なトラブルについて、Q&Aや相談先の案内を確認できるリンク先で確認

ここで一つ、誤解しやすい点があります。

労働局の援助や調停は、上司個人を処分させるための制度ではありません。

会社がパワハラ防止のための措置をきちんと取っているかをめぐって、労働者と会社の間のトラブルの解決を手助けする仕組みです。

援助や調停を申し出たことを理由に、会社が解雇や降格などの不利益な取扱いをすることは禁止されています(厚生労働省のリーフレット)。

厚生労働省の発表によると、2025年度に労働局へ寄せられた労働施策総合推進法(パワハラ防止法)に関する相談は80,969件でした。

前年度から11.2%増えています。

援助を終えた1,648件のうち、956件(58.0%)は助言・指導・勧告によって解決しています。

また、令和6年度の個別労働紛争の状況では、民事上の相談のうち「いじめ・嫌がらせ」が54,987件で、13年連続の最多でした。

えーじ
えーじ

上司や職場の人間関係で窓口に相談するのは、特別なことではありません。

相談窓口の一覧は、あかるい職場応援団の相談窓口のページでも確認できます。

沖縄労働局の労働相談事例では、直属の上位者に相談して動かなければ支店や本社に改善を求め、それでも改善されなければ労働局長の助言・指導やあっせんを利用する、という流れが示されています。

社内で段階を踏み、だめなら社外へ。

この順番を頭に入れておくと、次の一手に迷いません。

【道具】相談前に整理しておく相談メモ

相談の場では、緊張してうまく話せないこともあります。

口下手な人ほど、メモを用意しておくと安心です。

【相談メモ】

  1. いつから:(例:今年4月に今の上司が着任してから)
  2. 何が起きているか:(例:週に1〜2回、営業会議で大声で叱責される)
  3. どの程度か:(例:1回あたり10分ほど。人格を否定する言葉もある。記録は◯件)
  4. 心身への影響:(例:寝つきが悪い/日曜の夜に動悸がする)
  5. どうしてほしいか:(例:人前での叱責をやめてほしい/部署を変えてほしい/まずは話を聞いてほしい)
  6. 先に確認したいこと:(例:相談内容は誰に共有されるか/上司に伝わるのはどの段階か)

特に大切なのは、「どうしてほしいか」です。

ゴールがはっきりしていると、相談先も具体的な提案をしやすくなります。

まだ決められないなら、「まずは話を聞いてほしい」と書いても大丈夫です。

上司に目の敵にされた時の対処で失敗しやすいパターンとデメリット

対処法を知っていても、動き方を間違えると状況が悪くなることがあります。

よくある3つの失敗パターンを見ておきましょう。

①我慢を続けて心身を壊してしまう

パワハラを受けた後の行動で最も多いのは、「何もしなかった」です。

同じ実態調査では、パワハラを受けた後に「何もしなかった」人が36.9%で、何もしなかった人の65.6%が、理由に「何をしても解決にならないと思ったから」を挙げています。

でも、あかるい職場応援団はこう書いています。

「我慢していても解決しません。それどころかエスカレートする可能性があります」

同じ調査では、パワハラを受けた人のうち、怒りや不満・不安を感じた人が68.5%、仕事への意欲が下がった人が61.1%いました。

えーじ
えーじ

家族のために我慢しているつもりが、体を壊して働けなくなる。

これは、家族にとっても大きな痛手です。

②記録なしで訴えて社内での立場が悪くなる

反対に、勢いで動いて失敗するパターンもあります。

たとえば、ある日の叱責に耐えきれず、人事に「パワハラを受けています」とだけ伝えたとします。

日時も、言われた言葉も、見ていた人もはっきりしない。

これでは、会社も事実を確かめようがありません。

結果として「相性の問題」で片づけられ、上司との関係だけが気まずくなることもあります。

訴える前に記録をそろえることが、自分の立場を守ることにつながります。

③勢いで辞めて家計と職歴が苦しくなる

「もう無理だ」と、次の仕事を決めないまま辞めてしまうパターンです。

  • 収入が途絶え、住宅ローンや教育費の支払いが重くのしかかる
  • 焦って転職先を決め、似たような職場を選んでしまう
  • 面接で退職理由を聞かれ、上司への不満がにじみ出てしまう

もちろん、心身が限界なら、まず休むことが最優先です。

そのうえで、退職を決めるのは、記録と相談を済ませてからでも遅くありません。

えーじ
えーじ

転職を経験して実感したのは、追い詰められたときほど視野が狭くなるということです。

辞める・辞めないは、記録と相談で頭を整理してからでも十分に間に合います。

見逃したくない心身の不調のサインと休む判断

上司との関係に悩んでいると、自分の不調に気づきにくくなります。

仕事の問題より先に、体と心の状態を確かめておきましょう。

【道具】不調のサインのチェックリスト

次のような状態が続いていないか、確認してみてください。

  • 寝つきが悪い、夜中や早朝に目が覚めてしまう
  • 日曜の夜になると、動悸がしたり気分が沈んだりする
  • 食欲が落ちた、または食べすぎてしまう
  • 以前はしなかったようなミスが増えた
  • 家族にきつく当たってしまうことがある
  • 朝、出勤の準備をしようとすると体が動かない
  • 好きだった趣味や休日の予定を、楽しめなくなった

※このチェックリストは、医学的な診断ではありません。

当てはまる項目が多い、長く続いているといった場合は、早めに医師や専門の窓口に相談してください。

受診や休職を考えるタイミング

あかるい職場応援団では、体調に問題があれば「できるだけ速やかに専門医の診断を受けましょう」としています。

沖縄労働局の相談事例でも、精神的なダメージの程度によっては、心療内科などの専門家への相談を急ぐべき場合もあるとしています。

えーじ
えーじ

受診は、弱さの表れではありません。

医師に相談しておけば、休職を考えるときや、会社に配慮を求めるときの判断材料にもなります。

会社に産業医がいる場合は、まず産業医に話してみるのも一つの方法です。

国の労災認定基準でも、上司からのパワハラは心に負担がかかる出来事として扱われています。

労災認定基準での扱い(くわしく見る)

厚生労働省「心理的負荷による精神障害の認定基準」(令和5年9月)の心理的負荷評価表には、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」という出来事が挙げられています。

心理的負荷が「強」になる例として、「必要以上に長時間にわたる厳しい叱責、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃」を、反復・継続するなどして執拗に受けた場合が例示されています。

「中」程度の精神的攻撃などを受け、会社に相談しても適切な対応がなく改善されなかった場合も、「強」の例に挙げられています。

これは認定基準に示された例示です。

実際の労災認定は、個別の事情をふまえて判断されます。

眠れない、食べられないといった状態が続いているなら、職場の問題より先に、まず体を守ってください。

上司の標的から抜け出す異動と転職の判断基準

記録を残し、相談もした。

それでも状況が変わらないなら、環境を変えることを考える段階です。

選択肢は、「社内での異動」と「社外への転職」の2つです。

異動の希望で解決しやすいケース

問題が「今の上司との関係」に限られているなら、異動で解決することがあります。

  • 上司以外の同僚や、他部署の人との関係は良好
  • 人事や相談窓口が、話をきちんと聞いてくれた
  • 会社の仕事内容や待遇には、大きな不満がない
  • 社内に、異動できる部署や拠点がある

指針では、被害者と行為者を引き離すための配置転換が、被害者への配慮措置の例として挙がっています。

ただし、異動の希望が必ず通るわけではありません。

時期や人員の都合で、すぐには実現しないこともあります。

相談メモの「どうしてほしいか」の欄に異動の希望を書いておくと、伝え漏れを防げます。

転職を考えたほうがよいケース

一方で、次のような状況なら、社外に目を向けることも考えてください。

  • 会社が放置している:相談しても何も変わらず、うやむやにされている
  • 相談後に報復があった:相談したことで評価を下げられた、仕事を外された
  • 心身に影響が出ている:眠れない、出勤がつらいといった状態が続いている

同じ実態調査では、勤務先のハラスメント対策を「積極的に取り組んでいる」と評価した人のパワハラ経験率は15.2%でした。

一方、「あまり取り組んでいない」と評価した人では35.1%です。

会社の姿勢が変わらない限り、上司が替わっても同じことが起きるおそれがあります。

職場の人間関係を理由に転職する人は、決して少なくありません。

doda「転職理由ランキング」(2025年8月調査)では、全体で次の項目が上位に入っています。

  • 4位「尊敬できる人がいない」:20.9%
  • 5位「社内の雰囲気が悪い」:20.7%
  • 6位「人間関係が悪い/うまくいかない」:20.2%
  • 12位「ハラスメントがあった」:16.1%

doda調査の40代区分では、「社内の雰囲気が悪い」が32.1%で2位、「尊敬できる人がいない」が28.4%で3位でした。

えーじ
えーじ

どちらも、全体と比べて高い割合です。

上司との関係に限らず、今の会社に残るかどうかで迷っているなら、会社に残るか辞めるかの判断基準も参考にしてください。

ミドル世代が家族を守りながら在職中に転職準備を進める手順

転職を考えるとしても、いきなり辞める必要はありません。

家庭を持つミドル世代なら、在職中に準備を進めるのが基本です。

  1. 記録と相談メモを整え、今の状況を言葉にしておく
  2. 家族に状況を話し、生活費が何か月分あるかを一緒に確認する
  3. これまでの仕事を書き出し、強みと実績を整理する
  4. 転職サイトやエージェントで、求人の情報を集める
  5. 応募や面接は、心身の状態を見ながら無理のないペースで進める
  6. 内定が出てから、退職の意思を伝える

会社に知られずに進めるコツは、在職中の転職活動を会社に知られずに進める方法でくわしく解説しています。

面接では、退職理由を聞かれることが多いです。

上司への不満をそのまま話すと、印象を下げてしまうことがあります。

伝え方は、退職理由が人間関係の場合の伝え方にまとめています。

上司から離れることは、逃げではありません。

自分と家族の生活を守るための、立派な選択肢の一つです。

転職するか決めていなくても、相談していいの?

転職エージェントへの相談は、転職を決めた人だけのものではありません。

在職中のまま、今の経歴で応募できる求人や、ミドル世代の転職の進め方を聞けます。

ただし、エージェントが相談に乗れるのは「次の職場」のことです。

今の上司との問題そのものは、記録と相談窓口で向き合っていきましょう。

  • 一人で求人を探す場合:求人票だけでは、職場の雰囲気や働き方が見えにくい。心身が疲れている時期に、応募先選びまで一人で抱えることになる
  • 転職エージェントに相談した場合:応募できる求人の幅を、在職したまま確かめられる。紹介を受けた求人なら、配属先の働き方などを応募前に質問できる

外にも選択肢があると分かるだけで、「この会社しかない」と思い詰めずに済みます。

もう一つ大切なのが、次の会社選びです。

厚生労働省の実態調査では、勤務先の対策を「積極的に取り組んでいる」と評価した人と「あまり取り組んでいない」と評価した人で、パワハラの経験率に15.2%と35.1%という2倍以上の差がありました。

応募する前に、社員の口コミで会社の雰囲気や社風の傾向を確かめておくと安心です。

在職中なら、収入を保ったまま次の選択肢を比べられます。

心身がつらい時期は、休むことを優先してからで大丈夫です。

→ まずは求人の幅と進め方を知りたい人:リクルートエージェントに在職中のまま相談する

→ 管理職や専門職の経歴を活かしたい人:JACリクルートメントに経歴を伝えて相談する

→ 応募先の社風を事前に確かめたい人:転職会議で気になる会社の口コミを読む

※求人の紹介や応募先への質問の取り次ぎなどのサポートは、そのエージェント経由で応募する求人が対象です。今の職場の問題を解決したり、転職先の人間関係を約束したりするものではありません。

※口コミは投稿した人個人の感想です。配属先の上司がどんな人かまでは分からないため、複数の口コミから傾向を見る使い方をおすすめします。

上司に目の敵にされる時によくある質問

Q. 上司に目の敵にされたら辞めるべきですか?

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A. すぐに辞める必要はありません。

まずは「厳しい指導」なのか「パワハラに当たりうる言動」なのかを見分け、記録を残し、社内外に相談してください。

会社が対応しない、相談後に報復があった、心身に影響が出ているといった場合は、異動や転職を考える段階です。

ただし、心身が限界なら、まず休むことを優先してください。

Q. 1回だけ人前で怒鳴られたらパワハラになりますか?

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A. 1回だけで、すぐに判断できるとはいえません。

パワハラは3つの要素をすべて満たすものとされ、パワハラ指針の「該当すると考えられる例」には、「他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと」と「繰り返し」が書かれています。

一方で、指針は「個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得る」ともしています。

1回でも言われた内容がひどい場合や、判断に迷う場合は、記録を残したうえで総合労働相談コーナーなどに相談してみてください。

Q. 上司とのやり取りを録音してもいいですか?

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A. 日常の会話の録音について、大阪弁護士会のサイトに掲載された弁護士の回答では、「ほとんどの場合、秘密録音は違法となりません」とされています。

違法ではないと考えられる場合が多い一方で、同じ回答では「秘密録音を第三者に聞かせることは、別の問題」とも書かれています。

SNSに公開するといった使い方は避けましょう。

社内規程や個別の事情によって扱いが変わることもあるため、迷ったら弁護士などに確認してください。

Q. 人事に相談したら上司にばれますか?

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A. 会社には、相談した人のプライバシーを守るための措置が求められています。

相談の最初に「内容が誰にどこまで共有されるか」「上司に伝わるのはどの段階か」を確認しておきましょう。

ただし、事実確認を進める段階では、上司本人に話を聞く必要が出てくることもあります。

相談したことを理由とする不利益な取扱いは禁止されていますが、心配な場合は社外の窓口も並行して使うと安心です。

えーじ
えーじ

辞めるかどうかは、記録を残して相談してから決めても遅くありません。

まずは今日、記録テンプレートをメモアプリにコピーしてください。

まとめ|上司に目の敵にされても一人で抱え込まず順番に動く

上司に目の敵にされる毎日は、心も体もすり減らします。

でも、あなたが悪いからこうなっているとは限りません。

この記事のポイント

  • 見分ける:他の人への扱い、指摘の具体性、人格否定の有無の3つで確認する
  • 境界線:パワハラは3つの要素をすべて満たすもの。人前での大声の威圧的な叱責の繰り返しは、該当すると考えられる例に挙がっている
  • 記録する:日時、場所、言われた言葉、その場にいた人を、その日のうちに残す
  • 相談する:社内の窓口と社外の窓口を並行して使う
  • 決める:異動か転職かは、会社の対応と心身の状態を見て判断する

すべてを一度にやる必要はありません。

まずは今日あったことを、記録テンプレートに1件書いてみてください。

その1件が、あなたと家族を守る最初の材料になります。

辞めるかどうかは、まだ決めなくていい。次の一歩を選ぶなら、どちら?

記録と相談を進めながら、社外の情報も少しずつ集めておくと、判断の材料が増えます。

今の気持ちに近いほうを選んでください。

  • まだ辞めるとは決めていない。自分の強みや、相性のよい上司のタイプを知っておきたい → ミイダス(無料の診断つき。経歴を登録しておくと、企業からスカウトが届くことがある)
  • 転職を考え始めた。応募する前に、次の会社の雰囲気を確かめておきたい → 転職会議で社員の口コミを調べる

どちらも、今すぐ転職を決めるためのものではありません。

つらい日は、記録と休むことを優先してください。

※診断の結果や口コミで、次の職場の上司との相性が保証されるわけではありません。

今の状態に近いものから、次の1本を選んでください

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